はじめに:時間がない社会人の現実
ゲーム開発を夢見ているけれど…
多くの社会人が、かつての学生時代や趣味の延長で「いつか自分でゲームを作りたい」と思い描いています。しかし、いざ社会に出てみると、仕事・家事・人間関係…と1日の大半が他のことで埋まってしまい、「気づいたらもう夜」という日々の繰り返し。夢はあるのに、時間がない。それが現実です。
けれど、ちょっとした工夫と習慣の積み重ねで、その夢は少しずつでも確実に形にできます。今回紹介するのは、忙しい社会人でも「完走」できるミニゲーム開発のためのスケジュール術。現実的な見積もりの立て方から、モチベーション維持、習慣化のテクニックまで、実用的なノウハウを徹底解説します。
やる気と時間のギャップ
やる気はある。でも、いつも「今日は疲れてるから明日から」と思ってしまう。これはよくある話です。ゲーム開発の難しさは、技術的なこと以上に「継続すること」にあります。特に社会人になると、思い通りにいかない日常の中で、自分の時間を確保するのは簡単ではありません。
そのギャップを埋める鍵は、「やる気」ではなく「仕組み化」。つまり、時間がなくても少しずつ進められるような環境や習慣を作ることです。それが、開発完走の最初のステップになります。
スケジュールの重要性とは?

継続できる開発の鍵は「可視化」
スケジュールの力を侮ってはいけません。「いつ、何を、どれくらいするか」が明確になると、やるべきことに対する心理的ハードルが大きく下がります。逆に、「今日は何しようかな…」と曖昧なままだと、思考エネルギーが無駄に消費され、手を動かす前に疲れてしまうんです。
例えば、「月曜日はキャラクター設定」「火曜日はUI設計」「水曜日はバグ修正」など、タスクを日ごとに割り当てるだけで、「今日はこれだけやればOK」と気持ちが軽くなります。可視化されたスケジュールは、迷いを消し、作業に集中できる状態を作ってくれるんです。
「なんとなく」では続かない理由
人間の意志力は有限です。毎回「やるかやらないか」を自分に問いかけていると、やがて選ばなくなります。「今日は忙しかったからいいや」「また明日やろう」…その繰り返しが、挫折の入り口。
だからこそ、スケジュールが必要です。「なんとなく」で動くのではなく、あらかじめ計画して「自動的にやる」状態にしておく。これはまるで、毎朝歯を磨くように「当たり前のこと」として習慣化させるための第一歩になります。
まずは目標設定から始めよう
目的の明確化で迷走を防ぐ
「ミニゲームを作りたい!」と意気込むのは素晴らしいことですが、その「目的」が曖昧だと途中で方向性を見失いやすくなります。たとえば、「誰かに遊んでもらいたいのか」「自分の技術を高めたいのか」「収益化したいのか」…目的によって、作るべきゲームのタイプも変わってきますよね?
目的を明確にすることは、プロジェクト全体の「地図」を持つことと同じ。ゴールがわからないままでは、道に迷うのも当然。逆に、「3ヶ月でスマホ向けパズルゲームをリリースする」「Unityを使ってチュートリアルを完成させる」など、具体的な目標があるだけで、モチベーションも維持しやすくなります。
スコープの絞り込みと優先順位
もう一つ大事なのは、作業の「スコープ=範囲」を絞ること。あれもこれも盛り込みたくなる気持ちはわかりますが、それは時間がある人の特権です。限られた時間の中で完走するには、「絶対に必要な要素」と「妥協してもいい要素」をはっきり分けることが重要。
例えば、ストーリー、ボイス、エフェクト…などは「後から追加できる要素」として後回しにし、まずは「操作性」「基本ルール」「ゲームクリア条件」などのコア部分に集中する。このように優先順位を明確にしておくことで、途中で焦ることなく、自分のペースで開発を進められます。
見積もりのコツと実践方法
作業量の可視化とタスク分解
開発の見積もりをするときにありがちなのが、「なんとなく2週間でできそう」とざっくり予測してしまうこと。これが失敗のもと。見積もりは「ざっくり」ではなく「詳細に」行うべきです。
まずはプロジェクト全体を「モジュール」や「機能」単位で分解します。例えば、メニュー画面、プレイヤーの動き、敵キャラの挙動、スコアシステムなど。それぞれに「調査・設計・実装・テスト」という4段階の作業を設定して、かかる時間を見積もります。
このようにして、1つの大きなプロジェクトを「10分〜30分単位の小さなタスク」に分解することで、1日わずかなスキマ時間でも開発が進められるようになるんです。
バッファ時間を確保する理由
見積もりで忘れてはいけないのが「バッファ時間」の設定。つまり、予定外のトラブルや急用に備えて、あらかじめ余裕を見ておくということです。例えば「1週間で作れる」と思っても、実際には1.5倍かかると思っておく。これが現実的な見積もりになります。
社会人は予期せぬ残業や体調不良、家庭の用事などがつきもの。だからこそ「ギリギリ」ではなく「余裕あり」のスケジュールが、結果的にプロジェクトを「完走」させる秘訣です。
スキマ時間の有効活用術

平日15分の積み重ねがゲームを作る
「1日1時間も取れないよ…」と思っている人も多いでしょう。でも安心してください。1日たった15分でも、それが毎日続けば1ヶ月で約7.5時間、3ヶ月で22時間以上にもなります。この「ちょっとずつ」が、実は大きな成果を生むんです。
例えば、朝のコーヒータイムに「昨日の進捗をメモ」、夜寝る前に「1行だけコードを書く」など、無理のないタスクを習慣にしましょう。15分だけと決めておくことで「始めるハードル」も下がり、気づけば30分作業してた、なんてことも珍しくありません。
通勤時間・昼休みの使い方
通勤中や昼休みも、立派な開発時間にできます。スマホのメモアプリで仕様を書いたり、思いついたアイデアをまとめたり。ノートアプリでフローチャートを描いたり、クラウド型エディタでコードの一部を修正したり。環境さえ整えれば、意外といろんなことができるんです。
とくに「思考系」の作業は、手が動かせない状況でも可能なので、どんどんスキマ時間に当てていきましょう。「考える→帰宅後に実装する」という流れを作ることで、時間を2倍に使うことができます。
習慣化するための心理テクニック

意志ではなく“仕組み”で続ける
意志の力だけで継続しようとすると、多くの人が3日坊主になってしまいます。だからこそ重要なのが「習慣化の仕組み作り」。まず最初に取り入れたいのは、「トリガー行動」と「報酬行動」のセットです。
たとえば、「朝のコーヒーを飲んだらノートを開く」「夕飯後に10分だけ開発作業をする」など、既存の習慣と新しい行動を結びつけます。これにより、行動のハードルが大きく下がります。さらに、「作業後に好きな音楽を1曲聴く」「甘いものを食べてOKにする」など、自分への小さなご褒美を設定すると、脳がポジティブに反応して継続しやすくなります。
目に見える成果でやる気を刺激
ゲーム開発の進捗は、日々の変化が見えにくいため、「やっても意味がないかも…」と感じてしまうことがあります。そこでおすすめなのが、日々の成果を記録し「見える化」する方法。進捗ノートやカレンダーに「作業した日」に〇をつけていくだけでも十分です。
人は連続記録を断ちたくない心理(ドンツ・ブレイク・ザ・チェーン効果)を持っています。これを活用して「〇が連続しているから今日もやろう」と自然に思えるようにすれば、強制力を使わずに自分を動かすことができるんです。
スケジューリングツールの活用法
タスク管理ツールで全体像を見える化
現代のスケジューリングには、優れたデジタルツールがたくさんあります。特におすすめなのが「Trello」や「Notion」「Todoist」などのタスク管理アプリ。これらを使えば、開発の全体像をボード形式で視覚的に管理できます。
タスクを「アイデア」「進行中」「完了」などに分けて管理すると、やるべきこと・やったことが一目瞭然に。さらに、締め切りの設定や通知機能も活用することで、「忘れてた!」を防げます。
タイムトラッキングで作業時間を分析
「自分がどれくらいの時間をかけているのか」を把握するのも、継続において非常に重要です。ここで役立つのが「Toggl」「Clockify」などのタイムトラッキングツール。作業時間を記録していけば、「どの作業に時間がかかっているか」「効率よくできた日は何が違ったか」といった分析が可能になります。
時間を「見える化」すると、自分の傾向を知ることができ、ムダを削減してより効率的な開発へと繋がっていきます。
週単位の開発レビューで軌道修正
1週間ごとの振り返りをルーティン化
社会人にとって、週単位での振り返りはとても効果的です。週末に「今週やったこと」「できなかったこと」「来週やること」を紙でもデジタルでもいいのでまとめておきましょう。これにより、今の自分の立ち位置や課題がクリアになります。
振り返りを通して、「なぜ予定が崩れたのか」「どうすれば次はうまくいくか」などの学びが得られます。こうしたサイクルを続けることで、開発力だけでなく“自分を管理する力”も確実に伸びていきます。
「毎週日曜の夜」はゲーム開発の時間にしよう
おすすめなのは、毎週決まった時間に「週次レビュー&計画」を行うこと。たとえば「日曜の夜21時〜21時半」はその時間に固定する。これが定着すると、開発そのものが生活のリズムに自然に組み込まれていきます。
一貫性のある行動が継続の鍵。毎週30分でも、意識的に自分の開発状況を見つめる時間を作れば、迷走せず着実にゴールに向かうことができます。
モチベーションを維持する工夫
進捗を人に共有して刺激を受ける
モチベーションが下がる原因のひとつに、「自分だけで抱え込んでいる」という孤独感があります。これを解消するには「進捗を誰かに共有すること」が効果的。SNSやブログ、Discordなどのコミュニティを使って、自分の制作状況を公開してみましょう。
「見られている」という意識が適度なプレッシャーになり、自然とやる気が高まります。また、他の開発者の頑張りや進捗を見ることで、「自分もやろう」と前向きな刺激をもらえるのです。
やる気が出ないときの対処法
どんなにモチベーションが高くても、下がる日は必ずあります。そんなときは「作業しない」ことも選択肢のひとつ。無理をしても良い結果は出ません。
代わりに、「開発系の動画を観る」「他の人のゲームをプレイしてみる」「ノートに思いつきを書き出す」など、間接的な作業に切り替えるのがポイント。これも立派な開発活動の一部。無理せずペースを保つことで、長期的に見てモチベーションを維持することができます。
トラブル時の対処法とリカバリー計画
想定外の事態に備えておく心構え
開発が順調に進んでいても、突発的な仕事の増加や家庭のトラブルなどで、一時的に作業が止まってしまうことがあります。このとき大切なのは「焦らないこと」と「復帰の道筋を持っておくこと」。
スケジュールにはあらかじめ“余白”を設けておきましょう。例えば「2週間のうち1日は完全オフ」など、バッファを入れておくことで、リカバリーしやすくなります。また、「作業の記録」や「ToDoリスト」をしっかり残しておけば、再開時にすぐに以前の作業に戻れるようになります。
再スタートは“再計画”から始めよう
一度中断してしまった場合、「元の予定に戻る」のではなく「今の状況に合わせた再計画」を立て直すことが大切。たとえば、「予定より遅れているから機能を削る」「2週間後に公開をずらす」など、柔軟に計画を見直しましょう。
ミニゲーム開発において完走とは「最初の計画通りに終わること」ではなく、「最後まで自分なりにやり切ること」。この意識があれば、多少のトラブルにも柔軟に対応できるようになります。
SNSやコミュニティを活用して開発を加速
開発者コミュニティに参加して孤独をなくす
社会人ゲーム開発者にとって、最大の敵は“孤独”かもしれません。自宅でひとりコツコツ作業していると、「自分だけが遅れている」「これでいいのかな…」と不安になることがあります。そんな時は、SNSや開発者向けのコミュニティに参加するのが効果的です。
Twitter(現X)では「#Unity初心者」「#ゲーム開発」などのハッシュタグで日々進捗を報告している開発者がたくさんいます。Discordにも日本語対応のゲーム開発者サーバーが多数存在しており、質問や雑談も気軽にできる環境があります。同じ目標を持った仲間がいると、やる気が維持しやすくなり、技術的な壁にも対応しやすくなります。
定期的に“外へ出す”ことでやる気もアップ
ゲーム開発は完成するまで時間がかかるもの。でも、完成品ができるまで何も見せないのはもったいないです。開発途中のスクリーンショットや動画、GIFアニメ、進捗ノートの一部などをSNSに投稿することで、フィードバックが得られたり、応援の言葉をもらえたりと、開発のモチベーションが大きくアップします。
小さな「外への発信」を繰り返すことで、自然と「作って見せる」習慣ができ、完成後の公開までの心理的ハードルも下がっていきます。
実際の社会人開発者の成功例
会社員が3ヶ月でゲームを公開した話
たとえば、ある30代の会社員が、通勤電車の中と夜の15分だけで、3ヶ月間かけてミニゲームを開発し、itch.ioで公開したという事例があります。彼は「一度も連続して1時間の開発時間を取れなかった」そうですが、それでも“毎日手を動かすこと”だけを目標にし、少しずつ完成に近づけたのです。
彼の成功の鍵は、徹底したタスク管理と進捗の記録。「Trelloで毎日のタスクを管理」「作業時間をNotionで記録」「SNSで毎週進捗を報告」など、誰にでもできる方法を地道に続けたことで、仕事と開発を両立できたわけです。
育児と仕事の合間にアプリを作ったママ開発者
また別の例では、子育て中のママが、子供の昼寝時間や就寝後の30分だけを使って、教育向けのミニゲームアプリを開発し、Google Playで公開したという話もあります。
彼女が使った戦略は「1画面だけのゲーム構成」「テンプレート活用」「既存アセットの積極活用」など、労力を最小限にする工夫。完成度より“完成”を優先する考え方で、無理なく開発を楽しんでいました。
公開までのラストスパート戦略
最後の1ヶ月は“公開準備”に全振り
多くの社会人開発者が見落としがちなのが「公開準備に時間がかかる」という事実です。完成したゲームを実際に配信するには、パッケージング、バグチェック、スクリーンショットの撮影、紹介文の作成、プラットフォームの登録など、多くの作業があります。
だからこそ、ラスト1ヶ月は“公開に向けた作業”に全力を注ぐのが鉄則。ゲーム自体の新機能追加などはこの時期にやらず、完成している範囲で“出せる形”にまとめることに集中します。
チェックリストでミスを防止する
ラストスパートの時期は焦りや不安も高まりやすいです。だからこそ、やるべき作業をすべて「チェックリスト化」して管理するのが効果的。例えば:
- □ 動作テスト済み(複数端末)
- □ スクリーンショット撮影
- □ ゲームタイトル&説明文の作成
- □ 公開プラットフォームの選定&登録
- □ SNS用の告知素材準備
このように視覚的に進捗を確認できる状態にすることで、抜け漏れを防ぎつつ、安心して公開準備を進めることができます。
まとめ:社会人でも「作れる」し「出せる」
社会人だからといって、ゲーム開発を諦める必要はまったくありません。むしろ、限られた時間の中で進めるからこそ、工夫と習慣が身につき、効率的な開発スキルが磨かれます。
この記事で紹介したように、「小さく始めて、毎日少しずつ進める」「目標を明確にして可視化する」「仲間を見つけて刺激を受ける」「ミスを恐れずにまず出してみる」――この4つの意識があれば、どんなに忙しくても、あなたも自分のゲームを世に出すことができます。
まずは10分でもいい、今日から始めてみましょう。1年後にはきっと、今のあなたが想像できないような“達成感”が待っています。
よくある質問(FAQs)
Q1. 社会人でゲーム開発を始めるには何から手をつければいい?
A. まずは「目標設定」と「開発環境の構築」から。初心者ならUnityとC#を学ぶのが定番です。
Q2. 時間がなさすぎて何も進まないときは?
A. 1日10分からでもOK。「書くだけ」「考えるだけ」でも習慣化すれば前進できます。
Q3. 技術に自信がないけど大丈夫?
A. 問題ありません。テンプレートや既存アセットを活用して、まずは“完成”を目指すのが大切。
Q4. 継続のモチベーションが持たない時の対策は?
A. SNSやコミュニティで仲間を見つけたり、毎日の進捗を見える化することで、自然とやる気が保てます。
Q5. 公開ってどうすればいいの?
A. itch.ioやUnityRoomなど、無料で公開できるプラットフォームが多数あります。説明文とスクショがあればすぐに投稿できます。